7世代100年以上の壮大な物語
セミオーシス
スー・バーク 水越真麻訳
ハヤカワ文庫SF
本邦初訳のスー・バークによる、惑星開発の物語。大河小説と言っていいでしょう。分量としては文庫本で600ページたらずと、ちょっと短くて物足りない部分もあるが、続編も構想されているようで、合わせればれっきとした大河小説になるだろう。
地球が環境破壊や不平等でどうしようもなくなっちゃって、数十人のメンバーが宇宙へ旅立つ。着いたところがパックスという惑星。地球より10億年ほど年上の惑星で、地上は植物相に覆われている。この惑星上で、メンバーはそりゃもうひどく苦労するんですわ。
内容は、年代別にエピソードを重ねる構成となっており、それぞれのエピソードも単純に面白いが、全体を見ると、重層に見えてくる。特に目を惹いたのが、世代間の軋轢。最初に入植した世代に対し、その子世代、孫世代が反発する。それは、入植世代が知られて困ることを隠したから。でも、親世代はよかれと思ってやったんだけどね。このあたりの確執、軋轢がなかなか読ませる。動的な派手さはないが、内容は濃いように感じられる。
しかし、クライマックスあたりはその動的な派手さも加わり、ホントに大河小説らしいダイナミックさを獲得する。この部分では、自意識を持ち、他者を支配しようとする植物の描写が面白い。植物としても、なかなかに独創的である。
汚染され切った地球を離れ、自然豊かな惑星に移り住んでも、そこは楽園ではなかったのだ。もちろん、開拓の労苦は誰もが予測するだろうが、ここで重点が置かれているのは、むしろファースト・コンタクトの難しさ。過酷な状況下にあっても希望を失わず、果敢に挑戦する人々の姿がまぶしい。
(2019/11/28)