竜のグリオールに絵を描いた男 - Dan Shannon's World

Dan Shannon's World
Dan Shannonlives in Nagoya, Japan, with his wife and so many stuffed animals, such as dogs, elephants, pandas and so on.  He is one of the winners of 1998 The First Internet Bungei Shinjin Award in Japan.  He mainly writes science fiction for adults.  Several magazines have carried his short stories that are now in some anthologies published in Japan.
ONLINE
COURSES
コンテンツに移動します
巨大すぎるこの竜は果たして地図に載っているか?

竜のグリオールに絵を描いた男
ルーシャス・シェパード
内田 昌之訳 竹書房文庫

設定からしてすごい。なんと、グリオールという竜は全長が1マイルもあるのだ。帯の文には、「彼の上には川が流れ村があり、その体内では四季が巡る」とある。表紙イラストでも、口の中に道が描かれている。こんな竜、簡単には思いつかないよなあ。

この竜を舞台に、4つの物語が紡がれている。もっとも、連作としてはすべてではなく、まだ数篇あるらしい。残りの短篇も訳してほしいものだ。

ルーシャス・シェパードの作品を英語で読もうと思ったことがあるが、乏しい英語力では歯が立たなかった。多分に文学的。文章は他者が真似できるようなものではない、独特の味を持つ。この点ではレイ・ブラッドベリに通ずるものがあるが、ブラッドベリとは全く違うテイスト。余談だが、ブラッドベリの短篇を英語で読んで仰天したことがある。翻訳では、その独特のテイストは味わえないのだ。原書で読むことの意義を痛感した次第。

この連作は、ストーリーをたどって楽しむというよりは、描写やそれが示すものそのものを味わうのが正しい読み方だろう。竜が登場するファンタジィだが、アクションシーンはなく、血湧き肉躍るような要素はない。まあ、『指輪物語』を読んでいない人が映画『ロード・オブ・ザ・リング』を観て原作を勘違いするのと同じようなものだが、この作品も見た目の派手さからは意外なほど抑制されている。それに、最も感じるのは、登場人物がよく描かれているということ。SFやファンタジィでは貴重な特質だ。
(2019/11/18)
コンテンツに戻る