女闘好みにはたまりませんぜ
『最初の悪い男』ミランダ・ジュライ
岸本佐知子訳 新潮社クレストブックス
ご存じミランダ・ジュライの初長編。一癖も二癖もあって、一筋縄ではいかないが、反面、ストーリーには一直線なところもある、不思議な物語。
シェリルは43歳独身OL。ある日、上司から娘を預かって欲しいと言われる。そしてやってきたのは、クリーという20歳の女の子。衛生観念ゼロで足が臭く、美人で巨乳。はっきり言ってむちゃくちゃな女。このクリーとシェリルが壮大なバトルを繰りひろげる。バトルと言っても、比喩的なものではない。ホントに、肉体の派手なバトルなのである。殴るは蹴るは、組み伏せるはで、二人とも傷だらけ。それも、何度も繰り返して、読んでいるこっちがハラハラしてしまうくらい。キャットファイトが好きな人にはたまらんだろうなあ。
しかし、そういつまでもバトルをしているわけにもいかない。そのうちにふたりの関係は変化していき、最終的には百合な関係になってしまう。なんか、男どもが狂喜乱舞してしまいそうな展開である。
そして、クリーが男の子を出産する。出産する前から里子に出すことが決まっているが、シェリルがなぜか自分の子どものように育てることになる。おむつの中に大量のうんちをしておむつが破裂したり、そりゃもう大変。
それから、シェリルはフィリップという男と付きあっていたのだが、このフィリップ、キアステンという若い女と付きあおうとして、シェリルに許可を求めようとしょっちゅう電話してくる。それも、突っ込んでもいいかとか、舐めさせてもいいかとか、思いっきりきわどいことの許可を求めようとする。なんちゅう男だ、ったく。
メタフィクションなどの難しい仕掛けがなく、すんなりと理解できる作品である。なんか、女の目から見た男とか、女の目から見た女とか、参考にもなるしね。しかし、内容は思いっきりぶっ飛んでいる。超自然的要素は皆無だが、あまりにぶっ飛んでいるので、一種のファンタジーみたいに思えてくる。まさに、「傷だらけ」の小説。「疵」じゃないよ、念のため。
(2019/11/15)